研修内容を現場の共通言語にする

研修は、「新しいことを学ぶ、知識を入れる場所」という認識の方も多いと思いますが、研修講師としては、それ以上に「共通言語を生み出す場所」としての位置付けが大きいと感じます。今日は、部署メンバー全員が参加しない、例えば管理職研修などの後に、研修内容を共通言語としてどのように現場で使っていくかということを考えてみたいと思います。

研修は共通言語を作る場所

同じ研修に参加している人全員が、研修中に出てきた言葉を「共通言語」として使えるようになると、組織の中のコミュニケーションは取りやすくなります。例えば、私が担当する報連相研修では、【報告をする時の情報が古いものになってしまっては、上司の意思決定や次の仕事の指示の役に立たないから、なるべく早い段階で報告をしましょう】ということを伝えますが、その際には「報連相は鮮度が命」という言葉を合言葉のように伝えます。そうすると、研修後、現場に戻った時にも、上司から部下、先輩から後輩などが「報連相は鮮度が命だよね！」という言葉を使って話ができるようになります。同じ研修を受けている人どうしが、「報連相は鮮度が命」という言葉を聞くだけで、何を伝えようとしているのかが理解できるわけです。

これは、例えば、部署メンバー全員が役職に関係なく研修に参加している時には、起こりやすいことです。毎月、全社員で私の研修を受けてくださっている企業様がありますが、そちらでは、研修が終わった後は、研修中に使われていた言葉が業務中によく出てくるとおっしゃっています。研修で学んだことを現場で実践をしてくださっていることがわかります。

部署内で共通言語を作っている彼女の事例

しかし、例えば、管理職研修など、部署から1名しか研修に出ていない場合、部署に戻ってすぐに研修内容を共通言語にすることは難しいことです。その研修を聞いているのは管理職本人だけですから、共通言語にすることはできません。しかし、研修内容を皆に共有して共通言語にしていきたい、そんな時にどうすれば良いのでしょうか？

実際に私の管理職研修を受講してくださっていたある方が実践されていた方法が面白かったのでそれをご紹介します。

彼女は、管理職研修を受けた後に、皆に伝えたいと思ったキーワード（共通言語にしたいもの）を紙に書き出して部署に貼っているそうです。例えば、無意識の思い込み＝アンコンシャスバイアスについて学んだ後は、A４の白紙に大きく「アンコンシャスバイアス」と書いて掲示しておきます。そうすると、それを見たメンバーが次々に彼女に「これはどういう意味ですか？」と声をかけます。彼女は「今回の研修で学んだことなの」と言ってみんなと話を始めます。研修内容を噛み砕いて話をしつつ（もちろん資料も共有し）、自分たち（自分たちの部署）に当てはめるとどういうことだろうか、ということを皆の意見を聞きながら考えていくそうです。そうやって話をしている頃にはすっかり「アンコンシャスバイアス」が共通言語になっています。その共通言語を元に、お互いが何を気をつけるのか、どう行動するのかを決めていくと教えてくれました。

大変戦略的です（笑）。しかし、彼女のすごいところは、これを戦略的にやっていないところです。純粋に「みんなに知ってほしい」という気持ちから行っています。純粋に部署の中で同じ言葉を使えたらいいと思う！という思いから自然に出た行動であるということです。

しかし、メンバーの立場でいえば、管理職から一方的に押し付けられた言葉ではなく、「あれ？これどういう意味？」という疑問を持ち、管理職と一緒に話す機会があり、部署について振り返る時間となるわけですから、それはもう研修を受けているような気持ちになると思います。そして、研修内容が自分ごとになれば共通言語を自分の言葉として意識できるようになります。メンバーさん達は、今では、研修が終わるたびに、彼女がどんな言葉を掲示してくれるのかを楽しみにされているそうですが、本当に素晴らしい取り組みだと思います。

研修は足並みを揃える場所

研修は、新しい知識を取り入れるだけではなく、参加者全員で共通言語を作って「よ〜いドン！」と動き出すきっかけ作りとなる時間です。今は足並みが揃っていないところでも、研修で、同じ時間を共有しながら、共通言語を作る作業を行うと、足並みは揃ってきます。もし皆さんが組織に対して足並みがそろってないなぁ、まとまりがないなという思いが終わりでしたら、研修を実施されてみてください。

来年度に向けた研修のお打ち合わせが増えてきました。外部講師による研修は組織にさまざまな効果をもたらします。研修って何ができるの？どんな研修を取り入れれば良いの？いくらくらいで研修は実施できるの？さまざまなご質問に答えいたします。お気軽にお問い合わせください。

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