【人材育成】部下に教えることができない管理職の方へ「教えるための3ステップ」

【悩み】わが社の管理職たちには「仕事は上司の背中をみて盗むもの」という考えを持っている人が多いです。そのうえ「自分たちは上司に仕事を教えてもらったことがないので、自分たちも仕事を教えることができないと言います。どうすればいいでしょうか?

企業さまに研修のお打ち合わせに伺うと、経営者や人事担当者からかなりの確率でこのお悩みをお聞きします。例えば、人事の立場から「部下を育ててください」と管理職の方にお願いをしても「自分は仕事を教えられた経験はないし、先輩の仕事を見て盗んできたから教えることはできない」と言われてしまう。どうしたらいいですか?というお話です。多くの場合、人事の方も「というものの、自分たちも誰かに仕事を教えてもらった記憶ってないんですよね~」と苦笑いをされることもあります。

みなさまの会社、部署ではいかがでしょうか?そして皆さま自身はどのようにお考えですか?今日はそんなことを考えてみます。

教わった と 教える はイコールではない

私の答えは「教えてもらっていないから教えることができない」というのはナンセンスだと思っています。「教わる」ことと人に「教える」ことは別のことだと考えているからです。例え、本当に誰にも教えてもらっていないことであったとしても、自分で習得していることは、他人に教えることが可能だと考えます。また逆の言い方をすれば、教えてもらっていたとしても、自分が教えてもらった時とまったく同じように人に教えることはないとも思っています。こんなことを書いてしまうと怒られてしまうかもしれませんが、「教えてもらったことがないから教えることができない」という管理職は「業務怠慢」とすら思っているほどです。

そもそも論として

そしてもう一つ、最大の疑問。それは「本当に教えてもらったことがないのか?」ということです。誰でも仕事に初めて就くときには、そこに先輩や上司がいて、きっと何かしらのことを教えてもらっています。例えは、自分一人で会社を立ち上げた人であったとしても、分からないことは誰かに聞いているはずです。本当にごく稀に「誰にも頼らずにすべて一人でやりました」という方もおられるかもしれませんが、そんなレアケースを除いて多くの場合は、何らかの形で「他者」との関わりから様々なことを教わってきたのではないかと思います。

教えるとはどういうことか?

「教える」とは、ビジネスの世界では「ビジネス(自社)において望ましい結果を引き出せるようにする」ということだと思っています。製造であれば、お客様からのご要望に沿った製品を創ることができる、またそのような技術を身に着けることでしょうし、営業であれば、お客様の状況をヒアリングして自社商品をおススメし購入に繋げることができるようになることかもしれません。本来はこんなに簡単なことではなくもっと複雑で細かいことですので、「教える」前に教える側が相手にどのような変化を望むのか(つまりどのような結果を引き出したいのか)を明確にしておくことが必要となります。

どちらにしても、管理職の皆さまが「今すでにやっていること」を相手に伝えればよいわけで、自分が教わったことがないから教えられないということにはなりません。しかし、ここで「教え方が分からない」という課題にぶつかり、教えられない、という意見が出てくるのだと思います。そこで今日は「教える」ための3ステップをお伝えします。

教えるための3ステップ その1:何のために

まずは仕事や作業の目的を伝えます。「何のためにこれをやっているのか」ということです。もちろん会社の利益のため、売り上げのためではありますが、売上や利益は「結果」でしかありません。例えば製造であれば、この製品が完成することで社会にどのように貢献できるのか、お客様にどのように喜んでいただけるのかということです。以前のブログでも書きましたが人は目的が分かると主体的に動けるようになります教えたこと+αで主体的に動いてほしいと望む場合には、目的を伝えるプロセスは外せません。

教えるための3ステップ その2:具体的な行動

目的を伝えたら次は具体的な行動です。具体的な行動は「動詞で伝える」。どのように動けば望ましい行動がとれるようになるのかが分かるように「動詞」で伝えます。ここには、管理職の方が長年培ってきた経験が入ってきます。「昔はこういうやり方だったけれど、自分はこういうやり方に変えてより成果が出せるようになった」などという話があってもよいかもしれません。いくつかの作業工程があるのであれば(これは製造などに関わらず営業や総務でも言えることです)、仕事の目的を伝え、全体像を見せたうえで、ステップを区切って「どう動けばよいか」を伝えます。

教えるための3ステップ その3:確認⇒見守り⇒確認

具体的な行動として伝えた後は、実際にその通りに動くことができるかを確認しましょう。実際に一人でやってもらう、そして実行したうえで、うまくいったところ、失敗したところなどの確認をします。一緒に軌道修正を行ったら、次は見守り、適宜確認をして軌道修正を行っていきます。確認をするときには「ここまでのところで何か困っていることはない?」と「困ったことがある前提」で聞いていくと相手は「実は・・・」ということを発言しやすくなります。実際に部下がモタモタと慣れない手つきで作業をしているとどうしても口を出したくなりますし、また実際に自分が部下の代わりに仕事をやってしまいたくなりますが、そこはぐっと我慢です。最後まで本人にやらせてみることが成長の近道です。

成長のスピードを上げる秘密は心理的安全性

教える時に、教える側が意識すべきは相手の「心理的安全性」を確保することです。すなわち「分からないがすぐに確認ができる」「同じことを聞いても怒られない」「質問は恥ずかしいことではないと思える」等です。心理的安全性が確保されれば、部下は質問することへの抵抗がなくなり、どんどんと知識や技術を習得することができます。しかし、ここで「分からないことがあるけれど、質問に行くと怒られる」という思いがあり、質問が出なくなれば、やり方が間違っていたり、本質が分かっていないのに、事態が進み、やり方を間違ったまま覚えたり、事故に繋がったりするかもしれません。もしかしたら「一度教わったことは2度聞かない」スタンスで育てられた”昭和世代”とはこの感覚が大きく違うかもしれませんが、自分がそうだったからと言って、相手に同じことを望むのはちょっと筋が違います。要は、自分がどのような形で教わったかではなく、相手に合わせた教え方を考えていくことが重要です。

まとめ

教わったことがないから教えられないはナンセンス
教えるための3ステップ:その1 何のために(目的を伝える)
教えるための3ステップ:その2 動詞で伝える
教えるための3ステップ:その3 確認⇒見守り⇒確認

管理職研修では、事業部の人材育成について、具体的な育成のやり方や面談方法などをお伝えしています。研修ではワークを多く導入し、ロールプレイングなどを通して研修内容を習得していただくので、研修後の行動変容が起こりやすくなります。21年春入社の新入社員を迎えるタイミングで、ぜひ管理職の皆さまにも「人材育成」や「受け入れ側の心構え」などを学んでいただきたいと願っています。

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