「主体的に考える人」を育成する前に〜その若手、考える力がありますか?〜

研修のお打ち合わせに伺うと、ほぼ毎回の確率で出てくるワードが「主体的に考えて動いて欲しい」という言葉です。「主体性を持って欲しい」「主体的に考えて行動してほしい」「主体性を発揮してほしい」「自分で言われる前に考えて欲しい」など表現はいろいろありますが、とにかく「主体的に」「考える」というのがどの企業様も共通しておっしゃっていることだと思います。

11月25日には、無料オンラインセミナーとして「主体的に考えて行動する若手社員の育て方」を開催しますが、このテーマも多くの企業様からお聞きする「お悩み」に少しでもお役に立つことができればと思って設定をしました。

今日はこの「主体的に考える」についてお伝えをしたいと思います。

最初に見極める必要があること

新入社員や若手社員を「主体的に考える人材」に育成をしたいとお考えになった時に、まず最初に見極めていただきたいことがあるのです。

それは、「そもそも相手(若手社員)に考える力があるのか」ということです。「そもそも」という話で大変申し訳ないのですが、実はここが「主体的に考えて行動する人材」を育てるうえでは、外せない大切なポイントだと思っています。

考えるとは

考えるとはどういうことでしょうか?いろんな意見があるかと思いますが、私は、明治大学の教授で、教育学者であられる 齋藤 孝先生が書かれている以下の文章が、「考えるとはどういうことか」を的確に教えてくださっていると思っています。

私たちは基本的に、自分の頭の中にストックされた言葉で物事を考えます。つまり、語彙が少ないということは、思考する広さも深さも浅いということであり、書くときもしゃべるときも、思考が単純なままになってしまうのです。

国語力が身につく教室P54 齊藤 孝 著

齋藤先生のこの言葉を借りるのであれば、考えることは「語彙力」です。日本語としての語彙が少なければ、考えることはできません。でもこれは当然と言えば当然のことですよね。5歳の子どもが考えることと40歳の大人が考えることには大きな違いがあります。それは考えるための語彙力を持っているか持っていないかの違いです。また他言語で考えることを想像しても良いかもしれません。英語だけで会話をしようとして、自分の意見を英語だけで考えて伝えるということは、英語を十分に知っていて使える人にしかできません。

考えるためには、フレームワークが大事であるとか、考える順番が重要だとか、相手の立場に立つとか、さまざまなことが言われていますが、まず最初に見極めるべきは「考えるための語彙力が十分であるか」ということだと思います。そもそも語彙力が十分でなければ、相手にどれだけ「考えていこう」と伝えたところで考えることはできないのです。

自社の若手社員の語彙力は?

さて、今、皆さんが育てたいと思っておられる若手社員の語彙力はいかがでしょうか?日頃、若手社員と会話をしていて、嬉しい時も困った時も「ヤバイ!」としか表現しない人ではないでしょうか?どんな時にも「ヤバイ!」という単語だけを使って自分を表現しようとする人は「主体的に考える人材」として十分な語彙数を持っていると言えるでしょうか?

まずは、若手社員の語彙力を見極めてください。会話を通して、日報や議事録、レポートなどを通して、状況説明に十分な語彙力があるか、表現ができているか、また自分の思考や感情を表す時に、的確に表現できているかなどを見極めていただきたいと思います。齋藤 孝先生は、こんなことも書かれています。

気持ちを的確な言葉にできないために、モヤモヤした気持ちが晴れない、このように気持ちがうまく処理できないとストレスが溜まります。それが積み重なった結果、ちょっとしたことが引き金になって感情を爆発させてしまう、俗にいう、「キレる」という状態に陥りがちになります。

国語力が身につく教室P89〜P90 齊藤孝

語彙力を持ち、自分の思考や気持ちを表現できるようになることは、本人の精神を安定させていくためにも大切なことだと思わされます。

語彙力を鍛えるために

では、語彙力を鍛えるために何をすれば良いのでしょうか?とてもありきたりな回答になりますが、やはり「本を読む」「新聞を読む」を通して、語彙をたくさんインプットすることだと思っています。そうやってインプットする時には、ただ読むのではなく、アウトプットを前提としてインプットすることがポイントです。

私たちは、毎日たくさんの情報を目にしています。TwitterをはじめとするSNSではたくさんの文字を読んでいます。しかし、それが自分の語彙力としてインプットされているかというと疑問が残ります。私たちは情報をたくさん目で追っていますが、「使う」前提でインプットをしていないからです。

【新しい単語を目にした→自分の思考や感情をその単語を使って表現してみる】そのようなことをする人は多くありません。多くの場合は、【新しい単語を目にした→次の情報に目が映る】という流れではないでしょうか?これではどれだけ多くの語彙と出会っていても自分の語彙力が深まることはないのです。

だから本を読む時には、読んだ本の中の言葉を使いながら、アウトプットしていきます。新聞を読むのであれば、新聞記事を要約した後に、自分の主観を述べていきます。そうすることで語彙力が確実に増えていくと考えます。

新聞書き取りワーク

最後に、私の企業研修でも取り入れている「新聞書き取りワーク」をご紹介します。所用時間を15分くらいに設定してやっていただくと良いと思います。ぜひ一度取り組んでみてください。

  1. 新聞は見出しを流し見する
  2. 気になった記事に戻って読む
  3. 記事の見出しとリードの書き写し 
  4. 記事を要約する
  5. 記事の感想・選んだ理由・関連することなどをまとめる
  6. 意味のわからない単語・読めない漢字は調べる

新聞は紙でも電子でも構いません。新聞が手元にない時には、業界雑誌やビジネス雑誌でも良いと思います。まずは自分が興味を持てて、読みやすい記事から練習をすると良いでしょう。

新聞や業界雑誌を読むと、語彙力を伸ばしていくだけでなく、時事問題や業界の最新情報などを知ることができます。これは社会人としても大切なことなので一石二鳥とも言えますね。

今日は、「主体的に考える若手人材」を育てる時に、見極めていただきたい点をお伝えしました。若手人材の育成についてのお困りごとがあれば、お気軽にご連絡ください。貴社にとって最善の方法を考えていきたいと思います。

11月25日 開催 無料オンラインセミナー「主体的に考え行動する若手人材の育て方」お申し込み受付中です。

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