コロナ禍の大学生活を過ごした新入社員の入社について

現在、大分県を中心に企業の人材育成や職場環境作りに関する研修を行なっていますが、私の講師としてのスタートは「就職支援」です。大学3年生を中心に就職支援をしていたこともあり、企業研修では、新入社員研修に登壇することが多くあります。

新入社員研修の準備をするために、企業の人事担当者や経営者の方々とお話をさせていただきますが、毎年、新入社員に関して「挨拶ができない」「返事ができない」「自分から動いてくれない」という声を聞いております。それはコロナ禍を経験する前からずっと続いて来たことです。どうすれば1日も早く学生気分を捨て、社会人としてふさわしい行動を取ってくれるのか。どうすれば、もっと主体的に動いてもらえるのか、など、人事や経営者の皆さんは頭を悩ませておられます。

それは例年同様の悩みではあるのですが、今年は少し違う感じがしています。悩みがより深刻になったという感じでしょうか。悩みに関して「次元が違う」レベルを感じるというのが正解かもしれません。このブログを読んでくださっている方で2024年の新卒採用に関わっておられる人事や経営者の皆さまは、いかがでしょうか?今までの悩みと少し違う悩みをお持ちではないでしょうか?

例年以上に、挨拶ができない、返事ができない、会社にいても緊張感がなく家庭の延長上になっている、敬語が使えない、「うん」と頷くことしかできない、そんなことを感じておられませんか?

なぜ今年は例年以上にそんなことになっているのか、すでに答えは皆様のご承知の通りなのですが、少しだけ2024年春入社の皆さんの大学生活を振り返りたいと思います。

中国でコロナの最初の感染が確認されたのが2019年の年末です。私も最初は「隣の国で始まった流行り病」くらいの感覚でニュースを観ていたことを覚えています。その翌年、2020年の1月に日本で初めて感染者が確認をされたというニュースを観ても「東京で出たのね」くらいの感覚でした。ただ、まだCOVID-19というものがどのような病気なのかもわからず漠然とした不安を抱えていたのは事実です。そのような漠然とした不安をたきつけるように、日本でも感染者に関するニュースが多くなり、マスクや消毒液が店頭から姿を消しました。4月には緊急事態宣言が出され、日本全体が「交流」を避け、全国で様々なイベントが中止になりました。もちろんオンラインに切り替えたものをあったと思いますが、まだ機能的にも、私たちの感覚的にも、現代のように「すべてオンラインで」ということにはなっていません。(余談ですが、私もこの年に予定していた研修が数本中止になりました。今であればオンラインでの開催に変更になりますが、オンラインの研修ということがまだまだ未知の世界でしたよね)

2024年の春に入社をしてくる新社会人たちは、この2020年に高校を卒業しています。卒業式は中止、大学の入学式も中止、大学に入学した感覚がないまま、キャンパスに登校することも許されず、自宅待機が続きます。大学側がオンライン授業の仕組みを作っていき、学ぶことはできるようになりますが、大学でのリアルに人に会うこともなく、毎日自宅で、自分の部屋でPCの画面を眺めるばかりの日々でした。

学生たちは、2020年からの数年間をどのように過ごしていたのでしょうか。先日、登壇をした内定者研修で受講生の方がこんな話をしてくれました。

「高校の卒業式がなく、大学の入学式もなかった。その後2年生までずっと自宅からのオンライン授業が続いた。この2年の時間は、大学生になったという感覚はなくて、高校生活の延長だった。高校に5年間行った感じがする」

どれほどに虚しくて、もどかしい2年間だったでしょう。頑張って受験を乗り切って、高校の卒業式を迎え、大学に入ったら、あれもやろう、これもやろうと夢と希望を膨らませていたその生活はすべて自宅の部屋に閉じ込められてしまったのです。

もちろんこの2年間はアルバイトをする経験もありませんでした。多くの人は、アルバイトの経験を通して、お客様に怒られたり、職場の人間関係に悩んだり、自分なりに工夫した生活を送ったり、そんな社会人を模擬体験していきますが、その経験もないわけです。本人が怠けていたわけではなく、何か動き出すためのチャンスを伺うにも、社会が止まっていました。地元に帰っても祭りはなく、地域のおじさんやおばさんとの交流もなくなりました。知らない大人と話すチャンスはほぼなくなっています。

あれから2年が過ぎました。感染症には気をつける毎日は続きますが、私たちは2019年のような生活を取り戻そうとしています。そして、今年、2024年の新入社員の皆さんが入社をしてきます。

新卒のみなさんが、挨拶ができない、返事ができない、会社にいても緊張感がなく家庭の延長上になっている、敬語が使えない、「うん」と頷くことしかできない、という状態であったとしても不思議ではないなと思います。19歳〜21歳くらいの時期に、学生らしいことは何もできず、一方で社会人の模擬体験もできず、子どもとしても大人としても不十分な時間を過ごしているのです。

人事担当者、経営者の皆さん、今年の春に入社をしてくる皆さんは、私たちが想像もできない時間を過ごしています。学生時代の思い出も学びも何もない時間を過ごしています。自分の部屋に閉じ込められた時間を過ごしています。そんな彼、彼女たちに対して「今の若い人たちはよくわからん」「若者はなっとらん!」とくくってしまわずに、しっかりと時間を取って、社内での学びの時間を作って、向き合っていただきたいのです。

今年の新入社員研修は、学生から社会人になることを丁寧に伝えていく必要があると思っています。残念ながら皆さんは学生時代に社会人を模擬体験することができなかった。しかし、大学生活をやり直すことはできないまま、社会人になり、成果が求められていく、だからこそ、どのようなマインドで過ごす必要があるのかということを伝え、考えていただきたいと思っています。本来は経験で身につけていくマインドセットを、丁寧に言語化して、落とし込みをして、考え方を変えてもらう必要がありそうです。

例年の新入社員研修では、そんなマインドセットできないなと思われる人事担当者・経営者の皆さまがおられましたら、ぜひご相談ください。一緒に貴社にとって最適な研修を考えさせていただきたいと思っております。

貴社の新入社員の皆さまのために、また新入社員を迎える貴社の皆さまのためにお役に立てますことを願っております。

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