記憶に残る「理念研修」

福岡、大分で約9年間、大学生の就職支援や企業研修を担当させていただいていますが、この9年間の中で、記憶に残る感動を体験した研修がありました。

大分県にてご活躍中のNPO法人(障がい者支援施設)様 で「理念研修・チームビルディング」を担当させていただいた第2回目の研修での出来事です。

私の研修では、「今どこで、どこに向かって、あとどのくらい」というキーワードが多く登場します。それは、自分が自分の未来に向かって「どこを目指しているのか」そしてその未来まで「あとどのくらい」なのかを考えていただくためのワークです。同時に自分の未来のことだけではなく、所属している企業や組織が理念を基に「どこを目指している」のかを考えてもらうためでもあります。

どちらの企業さまで行う研修でも同じですが、みなさん、1回目のワークではほとんど記入ができません。2回目、3回目と研修の回を重ねるごとに、少しずつ自分の未来に関して、みなさんの記入量と記入スピードが変わってきます。

担当をしたNPO法人の「理念研修」でも同じように第1回目の研修から「今どこで、どこに向かって、あとどのくらい」をみなさんに考えていただきました。

そして、記憶に残る回となった第2回目。いつものように「今どこで、どこに向かって、あとどのくらい」のワークが終わって、むかえた休憩時間のことでした。

わたしたちの目指しているところが分かりません!
ひとりの方が、研修に同席されていた施設の理事長のところへ行き、そうおっしゃったのです。理事長は、すぐにその方のテーブルに椅子を持って移動し、その場で理事長を囲んだ話し合いがもたれました。近くにいた人たちもそのグループを囲み、輪は大きくなりました。

理事長は、嫌がるそぶりを一切見せず、みなさんに向けてしっかりと「どこに向かって」いるのかをお伝えになりました。

「今どこで、どこに向かって、あとどのくらい」を研修でお伝えするとき、組織の目指す「どこに向かって」が分からないと、その組織の中で、自分が今どこにいるのかも、あとどのくらいなのかもわからなくなります。だから休憩中に声を上げてくださった方の疑問は当たり前のことです。

理念研修は、組織を強くしていくためにはとても効果的ですが、同時に、今まで組織として何となくやりすごしていたことが、浮彫となり、放置できなくなる研修でもあります。理事長も、組織の最高責任者として「この組織はどこに向かっているのか」を突きつけられていくことはきっと楽なことではなかったはずです。

それでも、研修の休憩時間、理事長としてスタッフさんの言葉を真摯に受け取り、その場で話し合いに応じてくださいました。「今、休憩時間だからまた今度ね」と言うこともできたでしょうが、たった10分の短い時間でもしっかり向き合ってくださったのです。

真摯にスタッフのみなさまに向き合われた理事長の姿にとても感動をしました。そして、研修の休憩中にこの話し合いが生まれる組織の強さを同時に感じていました。とても強い組織だと・・・

研修は、本当にドラマチックです。大きな感動でいっぱいになった記憶に残る理念研修のことは、きっとこの先もずっと忘れることはないと思います。

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