チームを育てる「声かけ」

大分県では、フリーの研修講師として、企業にお伺いし、管理職研修や新入社員研修を担当させていただいておりますが、研修がない平日には、地元の小さな町の歯科助手として働いていることは以前もお伝えをしました。歯科医院に勤める理由は、地元でのコミュニティ作りという理由が大きかったのですが、実際に、今まで経験をしたことがない世界に飛び込んでみて「教えられる立場になって初めて分かる教える側のこと」を知ることができましたし、「組織に所属しないと見えない組織のめんどくささ」のようなものを感じ続けることの大切さを発見したりしています。

歯科医院での仕事は新しい世界が広がっていて大変刺激的です。毎日覚えることが多く、今でも必死ですが、一年が過ぎて、入社当時よりは少しだけ落ち着いて仕事をすることができるようになりました。私の勤める歯科医院はこの町でも歴史がある医院で、現在の院長先生の先代の時代から地元で愛されている医院です。患者さんも親子3世代で通われています。医院は、予約制でいつも予約はいっぱいです。しかし、急患の方や予約制であることをご存知ない初めての患者さまは突然お見えになります。

予約外で突然お見えになる新患さんに共通していることは「症状がかなり深刻」ということです。「今日はどうされました?」と症状をお聞きして、歯を見せていただきますが「わぁ!!!!」と声が出そうになりそうなほどの大きな穴が開いていたり、歯垢がびっしりとついていたり、と昨日、今日でこんな風にはならないよね、というような症状であることがほとんどです。

先日もそんな新患さんが飛び込みでお越しになりました。予約の患者さまだけでもいっぱいなのでスタッフも先生もヘトヘトです。そんな状態において、先生はその新患さんのレントゲン写真を確認した後に、口の中を再度、とても丁寧に観てこうおっしゃいました。

○○さん、よく決意をお決めになって勇気を出してお見えになりましたね。みなさま、だいたいうちの医院の前を3回くらい行ったり来たりするとおっしゃいますが、よくぞお見えになりました。これから一緒に頑張りましょう

私はこの言葉を聞いて、大変感動しました。先生の優しさと患者さまへの想いが溢れていたからです。この場合、私だったら「何でこんな状態になるまでほったらかしにしてたんですか?」とか「もっと早い段階で電話一本いただければ良かったんですよ」などと言ってしまいそうです(もちろん患者さまには言いませんが笑)。しかし先生は「よく頑張ってお見えになりました」と患者さまの行動を、しかも予約外で飛び込んで来たにも関わらず、その行動を認めて、褒めて、おられたのです。

ちょっとひどい言い方をしますが、ぶっちゃけてしまえば、何一つ褒めるところはありません。そんな状態になるまでほったらかしていたのはご本人ですし、もっと早く歯科医院に来ることもできたかもしれない、そもそも毎日ちゃんと歯磨きをしておけば良いじゃないか!!!という話・・・でもきっとご本人も自分に対してそんなことを思いながら、何度も迷いながら、勇気を出して歯科医院を訪ねていらっしゃった。ご本人も先生に「よく勇気を出してお見えになりましたね。これから一緒に頑張りましょう」と声をかけられて、うれしかったと思いますし、頑張って歯科医院通いをしようとお考えになったはずです(実際にその患者さまは真面目に通っておられます)。

私たちの生活では、また、組織ではどうでしょうか?こんな声かけができているでしょうか。

少なくとも福岡で管理職をしていた頃の私にはできない声かけでした。
「だいたい、こうなったのは誰が悪いの?」と平気で本人をせめていましたし、追い詰めていました。でも何か悪い状況になったときに、きっと本人が一番その悪さを感じながら、勇気を出して私に声をかけていたのです。

あの時に「そうか、よくそのことに気が付けたね、話をしてくれるのに勇気がいったでしょう。でも話をしてくれてうれしいよ。」や「よく報告してくれたね、ありがとう」と一言でも声かけができていればどれほど変わっていただろうかと思います。もしそれが言える管理職であったなら、当時の部下たちも、どれだけ安心して私に声かけができていたことでしょう。先生の一言に大きな学びをいただいたなと思っています。社会人としても、研修講師としても、学ばせていただけることがとても多い職場に感謝です。

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